大動脈コラム20「B型解離をお患いの方へ」
心臓血管外科 部長 市原 哲也
笑瓶さんが2月、急性解離で亡くなったことで、入院中の方や外来にお越しになる方はみなさん、
「私大丈夫かしら???」「俺もああなるのか???」と、戦々恐々となっておいでです。
ご存知のように、彼は2015年、B型解離でドクヘリによって運ばれ一命を取り止めました。
その後も某病院内科外来に通い、血圧を中心に行き届いた管理がなされていたはずです。
ですから、解離をお患いになった方々にとっては
「病院にかかっていてもやられるのか!?」と、余計に戦々恐々となるのでしょう。
ここで復習しておきましょう。急性解離にはA型、B型の2タイプがございます。
A型:心臓から出てすぐの大動脈(上行大動脈)に解離が及んでいる。
→原則として緊急手術が必要。
B型:上行大動脈に解離が及んでいない。→原則として手術は不要。
図1
この図で左がA型、右がB型です。お分かりいただけますか?
笑瓶さんは、2015年はこのB型だったのです。
問題は、今回の出来事ですね?
原因は2つ考えられます。
B型で診ていた方が、入院中や外来で突然A型になって緊急手術となることはございますが稀です。
まして、破裂にまで至って亡くなるというのは非常に稀です。
2.は考えにくいです。
理由は、瘤ができていれば、主治医からそのように話があり、
瘤が大きくなれば「そろそろ手術が必要ですよ」と言われるはずです。
もちろん、言われていても、周囲に黙っていることはあるでしょうが、
それなら、亡くなった原因は、はっきりと「解離性大動脈瘤破裂」と書かれたはずです。
ですから、B型解離で外来におかかりの方や、入院中の方に申し上げたいことは、
「怯える必要はございませんよ!」ということです。
これに怯えるよりも、退院したら何をしようかなど、楽しいことに目をお向けになる方が、
体のためにも心のためにもよろしゅうございますよ。
解離の方は、ほとんど「高血圧」をお持ちです。
血圧を安定させるには、もちろん薬が必要ですが、精神的な安定=リラックス、がとても大切なのです。
その意味で、滅多に起きないことに戦々恐々とするよりも、楽しいことをお考えになるのはとても大切なことなのです。
家族や知人の大動脈瘤や、急性解離、瘤破裂のことが心配だという方、遠慮なくご連絡ください。
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心臓血管外科 部長 市原 哲也