大動脈コラム27「急性解離 またしてもやられました!!」
心臓血管外科 部長 市原 哲也
急性A型解離の恐ろしさとは、その場で命が奪われることに尽きます。
復習です。
A型解離:緊急手術を要するタイプ
B型:原則として手術不要
そしてA型は
①70%の方がその場で亡くなり、30%の方しか病院に辿り着けない。
②24時間以内に90%の方が亡くなる。
ということでしたね?
今回は、最初の症状の中で、特にタチの悪いものについてお話します。
典型的な症状は、胸が痛い、苦しい、背中が痛い、というものです。が、気を失う方もいらっしゃいます。
最近、続けて3人の方が、気を失っているところを見つけられた、
ということで急性A型解離とわかり、救急搬送されました。
結果は、残念なことになったのが2人、元気に退院なさったのが1人、
です。
残念なことになった2人のうち1人は手術まで辿り着きましたが、
他の1人は救急車内で心停止し、なす術がございませんでした。
元気に退院なさったのは、手術室へ搬送途中に心停止しましたが、
心臓マッサージしながら手術室へ駆け込んで、手術したところ、
まさに奇跡的に助かりました。
助かった方を送り出すのはとても嬉しいものです。
逆に、残念なことになった方と、残されたご家族を見送るのは、とても切なく、悲しくて居た堪れない気持ちでいっぱいになります。
そして、医師としての力不足を痛感するのです。
30%の方しか病院に辿り着かない、と申しましたが、辿り着いて手術までできたなら、せめてその方々だけでも救われてくれればいいのに・・・と思います。理想は、全員が病院に運ばれ、元気に退院することですが。もっと高い理想は、解離という病気の根絶ですが・・・。
本当に恐ろしい病気です。
亡くなった方の奥さんがおっしゃいました。
「さっきまで笑って喋ってました。がんより怖いですね・・・」と。
立て続けに3人、あまりに激しいタイプの急性解離の治療に携わりましたので、お話しました。
家族や知人の大動脈瘤や、急性解離、瘤破裂のことが心配だという方、遠慮なくご連絡ください。
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心臓血管外科 部長 市原 哲也