医療コラム

大動脈コラム Vol.8「大動脈瘤で病院にかかっていながら破裂する」

大動脈瘤があると言われている方、知人・家族の大動脈瘤のことが心配な方へ

心臓血管外科 部長 市原 哲也

今回は、警鐘を鳴らすためのメッセージです。
当科での大動脈瘤破裂に対する緊急手術は、年間 胸部で約10人、腹部で約20人ですが、そのうちおよそ1/4の方は、大動脈瘤で病院あるいは医院にかかっていた、 という事実があります。いかがお思いになりますか?緊急手術で助かればいいのですが、残念な結果に終わる方も多々あり、何ともやり場のない気持ちに苛まれるものです。 他の病院から緊急手術依頼を受け救急搬送され、先方や家族の話しから、「大動脈瘤は診てもらっていました」という話を聞くと、 余計に『何とか助けなければ』と普段より力が入ります。 以下は、当院に実際に救急搬送された実例です。

市原先生


その1.72歳 男性
高血圧、虚血性心疾患、腹部大動脈瘤にて近医
(循環器科)にかかっていた。
突然の腹痛・腰痛で当院搬送。
直径70mmの腹部大動脈瘤破裂と診断され緊急手術、一旦は救命された。
第20病日、多臓器不全にて他界。

市原先生


その2.68歳 男性
高血圧、大動脈瘤にて近医にかかっていた。
今回突然の背部痛にて精査、直径75mmの下行大動脈瘤に急性大動脈解離が併発したものと診断され、当院搬送。
緊急手術が行われ救命。


治療をする際、大動脈瘤の場所・大きさ・形状を正しく把握することがとても重要で、CTによる検査は欠かせません。 私どもは日頃からCTに触れる機会が多いので容易ですが、専門外の医師にとってはなかなか難しいものなのです。
※CT=エックス線を使って身体の断面を撮影する検査

そこで、私どもがいつも声を大にして申し上げていることは、

  1. 患者さんに対しては、「とにかくCTを撮って、
    大動脈瘤について正しく把握しましょう」
  2. 専門外の先生方に対しては、「一度CTをお撮り下さい」

この2点です。
これをお読みいただいているのは一般の方々でしょうから、1.に該当します。

大動脈瘤があると分かっている方はもちろんですが、

  • ・大動脈瘤の有無は分からないが高血圧である
  • ・動脈硬化が強いと言われている
  • ・冠動脈に狭いところがあると言われている

というような方々は要注意です。脅すようなことを申し上げて恐縮なのですが、大動脈瘤があると分かっていながら破裂で緊急手術となる、 更には残念な結果に終わるというような悲劇は何としても避けたいと、日頃から強く思って診療にあたっております。

私どもは、

  1. 1.大動脈瘤破裂を未然に防ぐ
  2. 2.大動脈瘤破裂、急性解離に対し遅滞なく正しく対応する

この2つを使命と心得、診療に従事しております。
心当たりのある方、また、家族や知人にそういう方があれば、ぜひご連絡下さい。

【心臓血管外科へのご相談】

市原先生

心臓血管外科 部長 市原 哲也


1.電話 04-7141-1117
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