講師:おおたかの森病院 呼吸器科 部長 齋藤 誠 医師
2人に1人が、がんになる時代。自然死の流れの中に、がんがあるという状況です。がんは、1981年以降、全死因の1位であり、中でも肺がんは…
で、2016年度の肺がん死亡者は73,820人にも上り、長寿社会を背景に今後少なくとも10年は増加すると予測されています。
当院での状況は…
★診断には細胞・組織学的検査が必要です。
※レントゲン・CT・腫瘍マーカー等は補助診断
■非小細胞性肺がん(肺がんの85%)は、3種類に分けられます。
腺がん(60%)
→女性に多い
扁平上皮がん(20%)
→タバコと関連
大細胞がん(5%)
■小細胞性肺がん(肺がんの15%)、早期にリンパ節に転移する傾向があります。化学療法に反応しますが、耐性を作るのも早く予後が不良です。【肺がんの病期(ステージ)】
TNM因子で1期から4期に分類されます。
T:原発巣(T1-T4)
N:リンパ節(N0-N3)M:遠隔転移(M0-M1)
※治療方針の決定に欠かせないものであり、治療後その病気の状態がどうなるかを判断するために用いられる最も重要な材料となります。
★病期Ⅰ~Ⅱ期、T3-4NO-1 Ⅲ期が手術適応です。
肺は右に3葉、左に2葉あります。
★間質性肺炎との合併について
間質性肺炎は高頻度で肺がんと合併することが知られています。特に特発性間質性肺炎(IIPs)の中でも最大多数を占める特発性肺線維症(IPF)の肺がん発症リスクは7~14倍と報告されています。また、間質性肺炎があると抗がん剤治療や放射線治療ができないという不利益もあります。
【肺がん手術の適応と限界】
手術適応は肺がん全体の1/3で、低肺機能や悪性胸水などがあると適応外となります。また、切除後の5年生存率は40~60%といわれています。
人体に10Gy(グレイ)照射するだけで死亡してしまう放射線の6倍の60Gyを主病巣などに照射する根治的照射と骨や脳に対して痛みのコントロールや術前に行う姑息的照射があります。
がん細胞に耐性ができないようにするため多剤併用療法が基本です。プラチナ製剤とタキサン系、ビンカアルカロイド、代謝拮抗剤、経口抗がん剤のいずれかを組み合わせます。
★効果が確定している『標準治療』をお勧めします。標準術式は肺葉切除+リンパ節郭清です。
また手術をすることで検体から遺伝子変異を調べ、効果の高い治療薬(オプジーボ等)の適否を検索できます。