消化器・肝臓内科

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診療科について

診療科概要

当科では、食道、胃、大腸などの消化管疾患と、肝臓、胆嚢、すい臓などの肝胆膵疾患を扱っています。 消化管疾患の代表的な症状は、胸やけ、つかえ感、胃もたれ、腹痛、食欲不振、下痢、便秘、吐血、血便等です。超音波検査、CT 検査、MRI 検査、内視鏡検査等から総合的に診断、治療を行っています。 悪性腫瘍の約 50% は消化器疾患と言われており、気になる症状がある場合はお気軽にご相談ください。
近年内視鏡技術の発展は著しく、早期の食道・胃・大腸癌が発見される頻度が増加しています。 早期に発見すれば内視鏡的切除で治癒する可能性が高く、当院では食道・胃・大腸の早期癌に対する ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)に積極的に取り組んでいます。また、胆道系疾患に対しては ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)を行い、 胆管結石に対する内視鏡的結石除去術、胆道癌・膵癌による閉塞性黄疸に対する内視鏡的胆管ステント留置術、慢性膵炎に対する膵管ステント留置術等の内視鏡治療を多数施行しています。
肝疾患に対しては B 型・C 型肝炎ウイルスに対する治療をはじめ、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、 原発性胆汁性胆管炎、自己免疫性肝炎、肝細胞癌、食道胃静脈瘤等について治療を行っています。特に肝細胞癌、その原因となるウイルス性肝炎に関しては肝臓専門医である外科の松倉院長が専門としております。

日本消化器内視鏡学会指導施設

千葉県肝疾患指定医療機関

日本がん治療認定医機構がん治療認定医認定研修施設

主な対象疾患・診療内容

●機能性消化管疾患(逆流性食道炎・機能性ディスペプシア・便秘症・過敏性腸症候群)

胸やけ、胃もたれ、心窩部不快感、便秘症は外来で最も多い訴えです。まず胃潰瘍、大腸癌等の病気を見落とさないために、内視鏡検査歴のない患者さんには内視鏡検査をおすすめします。次に、自覚症状に応じて内服調整をしますが、その際に重要なのが生活習慣・食習慣です。食べ過ぎ、水分不足、不規則な生活、睡眠不足、運動不足・ストレス過多等が原因となりやすいですが、生活習慣の改善はなかなか難しいものです。外来ではそれぞれの患者さんの生活背景を大切にし、極力少ない薬で納得して内服、定期通院してもらえるような診察をこころがけています。特に便秘症については近年新規薬剤が複数使用できるようになり、患者さんに応じた使い分けが難しい分野でもあります。当科では新規薬剤の使い分け、使用経験等について東葛北部地域の研究会で定期的に講演し、便秘症診療について情報交換を行っています。

●胆石症

胆石症の有病率は高く、胆嚢結石が 75%、総胆管結石が 25% と言われています。胆嚢結石の多くは無症状で経過しますが、一部は胆石発作、急性胆嚢炎を来し外科手術を必要とします。また、総胆管結石は急性胆管炎を起こし、内視鏡的結石除去術、胆道ドレナージ等の内視鏡治療を必要とします。
胆道系の内視鏡治療(ERCP 関連手技)は専門性が高く、施行できる施設が限られているため、近隣施設と連携して治療が必要な患者さんを多く紹介いただいています。当科では年間 150 ~ 200 件の ERCP を施行しており、胆管挿管率 98% 以上の高い成功率を維持しています。

●消化管出血

以前は胃・十二指腸潰瘍が多かったものの、近年は内視鏡検診の普及、潰瘍の原因となるピロリ菌の除菌治療が普及したため潰瘍は減少傾向です。その分、心筋梗塞や脳梗塞の予防として処方される抗血栓薬(バイアスピリン等)に起因する高齢者の消化管出血が増加しており、特に大腸憩室出血が増加しています。
出血源同定が困難であること、再出血を来しやすいことから治療に難渋することが多いと言われていますが、当科では透明フードを使用しウォータージェットで憩室底部を詳細に観察することで出血源となる責任憩室を同定し、再出血をきたしにくいとされる EBL(endoscopic band ligation)により治療をしています。
憩室が吸引しづらい場合は EBL 不応例とされており、その場合にクリップ、凝固法等工夫することでほとんどの症例で内視鏡的に止血を得ています。止血困難例について近隣からのご紹介もいただいており、外科治療が必要な場合は速やかに手術できるよう緊密な連携をしています。

●大腸ポリープ・早期胃癌・大腸癌

検診で便潜血陽性となった場合、精密検査で大腸内視鏡検査を施行します。以前は苦痛を伴う検査と言われていましたが、当科では鎮静剤、鎮痛剤を適切に使用し、検査後の腹部膨満感を軽減する目的で CO2送気を用い、術後癒着例でも挿入可能な細径内視鏡を用いています。大腸ポリープ・大腸癌の診断・治療に関しては当科の講演会記事をご参照ください。
胃の ESD は4泊 5 日~ 6 泊 7 日、大腸 ESD は 3 泊 4 日~ 4 泊 5 日で治療しています。治療が必要な方は外来でご相談ください。

●潰瘍性大腸炎

以前は患者さんの数も少なく難病と言われており、主に専門病院でのみ診療が行われていた疾患ですが、現在は患者数も 10 万人を超え、一般市中病院でも診療が行われる疾患となりました。しかし、専門性が高い疾患であることに変わりはなく、消化器病専門医であっても臨床経験に大きな差があります。当科では基本治療薬である 5-ASA 製剤の適正な使用(内服、局所製剤)を最重要視し、極力再燃しないような治療を目指しています。活動期にはステロイド治療だけでなく、L-CAP(顆粒球除去療法)、場合によっては生物学的製剤(インフリキシマブ)を用い、5-ASA 製剤だけで寛解維持できない患者さんには遺伝子(NUDT15)を測定したうえで免疫調節薬(アザチオプリン)を併用しています。現在消化器病学会から潰瘍性大腸炎のガイドラインも刊行されており、ガイドラインに則った標準的な治療をそれぞれの患者さんの生活に合わせて提供しています。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)について

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、高周波メスで病変周囲を切開し、病変下の粘膜下層を剥離していく事により、 腫瘍径が大きな病変でも一括で切除することが可能です。腫瘍を一括切除することにより根治性を高め、 正確な病理組織学的診断が可能となり、その後の明確な治療方針が患者様に提示できる優れた手技です。 また臓器が温存されるため患者様の負担軽減につながり、外科手術が困難な高齢の患者様においても施行可能です。

内視鏡で治癒可能な食道・胃・大腸の早期癌がESDの適応となります。拡大内視鏡を用いて腫瘍の範囲診断、 深達度診断を行うことで、内視鏡治療と外科手術のどちらがよいかを判断すると同時に、 病変の部位や大きさ、スコープ操作性等から術前に治療の難易度を評価し、質の高い内視鏡診断・治療を こころがけています。

以下に当院に紹介受診いただいた早期胃癌のESD症例を提示します。

通常観察およびNBI拡大観察で病変の深達度および範囲診断をします
通常観察およびNBI拡大観察で病変の深達度および範囲診断をします
病変周囲にマーキングし、高周波メスで病変周囲の切開をします
病変周囲にマーキングし、高周波メスで病変周囲の切開をします
太い血管を適宜止血鉗子で焼灼しながら粘膜下層を剥離していきます
太い血管を適宜止血鉗子で焼灼しながら粘膜下層を剥離していきます
合併症なく剥離が完了し、病変を一括切除しました
合併症なく剥離が完了し、病変を一括切除しました

瘍は約2ヶ月で治癒します。上記の症例は粘膜内癌で、病理組織学的診断で脈管侵襲陰性、 水平断端垂直断端ともに陰性であり内視鏡的に治癒切除となりました。 脈管侵襲が疑わしい症例に対して適宜免疫染色を追加し、根治度判定の質を高めています。

内視鏡検査の普及、診断精度の向上により早期癌の段階で診断される症例が増えたことから、 当院でもESDの件数は年々増加傾向にあります。早期胃癌はもちろんのこと、 今までは先進医療として行われてきた大腸ESDが保険収載され、 それに伴い当院におきましても従来の内視鏡的粘膜切除術(EMR)で一括切除が困難な症例や、 内視鏡的治療が困難な症例に対して大腸ESDを行っており、良好な成績を残しています。

JEDproject参加について

診療・治療実績

医師紹介

  • 安達 哲史

    安達 哲史 (Adachi Satoshi)

    職位 消化器・肝臓内科 医長
    学歴 千葉大学 H22年卒
    資格 日本内科学会認定医、日本内科学会総合内科専門医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・関東支部評議員、日本消化器病学会専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、緩和ケア研修修了、臨床研修指導医
    専門 早期胃・大腸癌の内視鏡治療(ESD)、総胆管結石・閉塞性黄疸の内視鏡治療(ERCP)、大腸憩室出血の内視鏡的止血術、潰瘍性大腸炎の内科的治療
    略歴 新松戸中央総合病院、彩の国東大宮メディカルセンター、東葛病院
  • 相澤 良夫 (Aizawa Yoshio)
    外来日:(火曜終日)

    学歴 東京慈恵会医科大学 S51年卒
    資格 内科学会指導医、消化器病専門医・指導医、肝臓専門医・指導医
  • 内藤 嘉彦 (Naito Yoshihiko)
    外来日:(火曜午前)

    学歴 杏林大学 H2年卒
    資格 消化器病専門医、肝臓専門医、 日本医師会認定産業医
  • 高森 旭隆 (Takamori Akitaka)
    外来日:(水曜13:00~14:00)

    学歴 鹿児島大学 H2年卒
    資格 消化器内視鏡専門医、消化器病専門医
時間
午前 内藤
相澤
安達
午後 相澤 高森
(13:00 ~ 14:00)
安達

学会・研究会報告

115回日本消化器内視鏡学会関東支部例会発表(20221211日)

主題7「内視鏡診療とSDGs」のセッションは16演題の応募中10演題が採択されましたが、そこで当科から「他部署との連携強化による当院における消化管出血に対する取り組み」について発表してきました。

当院では新入看護師を対象とした内視鏡センター主催の勉強会を年1回開催しています。内視鏡を洗浄したり、光源に内視鏡をとりつけたり、実際に体験することで内視鏡に対する理解を深め、さらには病棟での観察項目や内視鏡検査・治療に出棟する際の注意点等を再確認します。

また、全体研修修了者に対して、消化器・外科病棟の看護師でさらに内視鏡について学びたい人を対象として業務時間内の研修を随時行っています。全体研修と異なり、目標をもって何かを学びたい人が研修を受けるため、ERCPESD等の治療見学や、スコープの洗浄、内視鏡センターの一日の流れの見学等、目的に応じて個別の研修を組み立てます。

内視鏡院内研修等を通じて院内発症の消化管出血の予防・早期発見が可能となり、また救急搬送された消化管出血症例に対する初期対応・観察項目についても院内教育・フィードバックの徹底で体制を構築してきました。

会場の先生方からは、院内の内視鏡教育について良い評価をいただきました。今後も継続してよりよい内視鏡診療の体制を構築していきたいと思います。

消化器・肝臓内科医長

安達哲史

  

   

胃癌・大腸癌の早期発見と内視鏡検査・治療について

新型コロナウイルスが蔓延して約2年半が経ちました。その後ウイルスの特性も徐々に判明し、マスクの着用やアルコールによる手指消毒の徹底がなされるようになりました。コロナ対策により通常の風邪は大幅に減少したものの、検査を延期したことによる癌の発見の遅れが目立つようになりました。経済と自粛のバランスが重要であることと同様に、適切な感染対策をとったうえで必要な検査をしっかり受けることが重要であるという認識がなされるようになってきました。

現在は内視鏡検査前の問診を徹底し、当日の検温や自覚症状、接触歴を確認したうえで新型コロナ感染症のリスクを評価しています。低リスクと判断される場合は検査を施行し、高リスクと判断される場合はコロナウイルス抗原やPCRを採取した後に検査する方針が推奨されています。コロナ前まで定期的に内視鏡検査を受けていた方や、胸やけ、腹痛、血便等の自覚症状があっても内視鏡検査を控えている方は、検査の必要性についてかかりつけの先生とお話してみてください。

内視鏡検査で癌がみつかった場合、早期であれば半分以上の場合で内視鏡的な切除が可能です。早期癌の内視鏡治療は先端1.5mm2.0mmの電気メスを用いて粘膜、粘膜下層を切開・剥離するもので、静脈麻酔を用いて30分~60分で施行されます。当院でも「早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術」の施設認定を2016年に取得し、日本消化器内視鏡学会指導施設として質の保たれた内視鏡検査・治療を実践しています。お困りのことがありましたら是非一度外来にお越しください。

 

消化器・肝臓内科医長 安達哲史

日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・関東支部評議員